我が髪をそっと撫でおる君に添いネコの微睡（まどろ）みを　ひだまりの午後 　　（三席）

ありふれた想い似合わぬわれゆえに心型のチョコひび割れて残りて

紅を秘めなお白き握り飯海苔に包めば知る人もなし 　　　　　　　（一席）

庭の雪吉野の峯に見たてつつ人恋ふ女（ひと）を想ひけるかも

さていかに男たるべき男などおらずともよしとわめく世紀に

髪を切り会って一言伸びたねと春近づけど木枯らし一号

時季過ぎてアスパラの植替え根は裂かれ土をかえれば蔓（つる）宙を舞う

音楽が例えばバッハの無伴奏チェロが世界に響き渡れば

かなうなら　あなたにここに　いてほしい　はるのひはまだ　よわよわしくて

環状線どの表情（かほ）も窓にやさしくて日本人はなぜ死に易き

人二人見てるところは異なれど同じ笑顔で向かい合ってる　　　　　（二席）

蹴り上げた空き缶タバコの灰が飛ぶ　イタリアトマト爆破計画　　　　（一席）

酒に痴れ笑い崩れる白翁に重ねて偲ぶふる里の父

むらさきの小物ばかりを撰んでは欲求不満？と君に揶揄され

故郷よ格子の電線空区切り窓に張り付く想い出たるか　　　　　　 （三席）

雪かともまがふばかりの冷たき香重みに裂けし枝々より立つ


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　　　　　　第六回詠草