冬晴れにほしてみたんだ敷き布団君の匂いは消えていくけど

 一人裂く形ない時破（ときは）期せずして君との別れ映すカケラに
 
炬燵の上積み重ねある 『 随想集 』 母あごをのせテレビながむる

暖かい言葉を忘れ風花の舞い散る空に溜息ひとつ　　　　　　　　（二席）

あけぬ夜はなしと信じて歩めども朝日の昇る時はまだ来ぬ

寒空をふと見上げれば笑顔あり 　星は瞬き心は高鳴る　　　　　　（二席）

バルカンのわがともどちの無駄死をともに問ひしぞ忘れ難なむ
君にあらむ神の生命を知る人も知らざる吾も学兄（きみ）逝くを泣く
花影に笑みする君が声ききしまぼろしいだき会堂を辞す　　　　（三首連作、一席）

わたくしは心を知らぬ楡であり何にでも泣く青桐である

春一番解けえぬ雪は残れども背中押されて行く旅路かな

行き渡る白き蝶々の光跡は二度と見られぬ幻燈の月　　　　　　 　（三席）　

雨に濡れ燈し火はじくアスファルトを底減りし靴の男沈み行く

切断面意味乞う眼前あらわれて「現代」の音色奏で去りゆく

繋いでも切れ切れなる言葉に辟易し吐く息は白く舞う月冴ゆる夜

少しずつ私が閉じるのを感じるどこにもなくて愛すべき「君」は　　　（二席）

寒風に木々空を割る夕暮れは紅したたりて雪染まらんとす　　　　 （二席）

思い出が散りてはらはらどうしてと責める権利は誰にもなくて　　　 （三席）

世紀こえカタストロフは来ぬままにふるさともなし　電話なりおる　　（三席）

曇り空昨日の夢も濁りつつ沈む心と鈍い頭痛が


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　　　　　　第五回詠草