第十二回 詠草 
第十一回 西千葉短歌会詠草
世話人＝三浦 佑之 （ＭＩＵＲＡ Ｓｕｋｅｙｕｋｉ）
２００２年５月２８日、久しぶりの短歌会でした。３月に卒業生を送り出し、広報も不足
していて、参加者は１０名程でした。少し寂しい感じもしましたが、じっくりと投稿歌につ
いて議論することができました。院生の皆さん、学部生の皆さん、次回はぜひどうぞ。
投稿歌数が少なかったので、今回は席次は決めませんでした。
（注）行間の空いていない歌は連作です。
１ 桜花そよと流れて花びらのふたひらみひら妹が背に落つ
並木路や桜と語らふ浅緑過ぎがてにこそ耳すましけれ
桜葉とけやき葉競ふ若緑先の御門のあれましし日に
２ 氷見港にきときとの鰤箸にして母は若やぐ故郷にあり
これ仙台これは熊本と偲ばれぬ桜のもみじ葉の影の人たち
３ ベランダのキャミソールについたタンポポの種子は
指先ではじかれ
饒舌な語りの合間に広がる彼の沈黙の底に落ちた
ふるさとの山菜料理の苦味を覚えたまま
恋人を失いそうだともらした彼の嘆息に
小さな綿毛はひるがえり
月の光も届かぬ真夜中の地下鉄に滑り込む
年老いた男女のしっかりとつながれた手の中で
夜の明ける音を聞いたなら
旅は
じきにおわる
４ 書き終えた伝言メモはクロッキーのようにこの世をゆがませている
はじめての素足にサンダルひっかけて階段あがる ちょうちょ・ちょうちょ
５ 葉も花も食はれし裸木突つ立てりおそらく神なきベツレヘムの闇
十三歳のパレスチナの少年射殺されぬ十三歳は眠くてならぬ歳なり
６ 確かめ合うこと出来ぬ間に追う我の指すり抜けて桜の散りぬ
７ 覊旅歌三首（近江）
お下がりの白き獅子老いゆうらりと湖東の田園にわれは旅人
われ見たり惨殺されし御子の墓と 兄弟を手玉にとりし女立つ野と（旋頭歌）
血を吸うた沃野の宿の宴には生首提げる人らも集いて
８ 泣きたる君と校庭 春眠 僕は真に迫った夢を見る
夕焼けのカーテンコール さようなら 逆上がりした手は鉄の匂い
腹くくり行かぬと決めた停車所は変わらない君変われない僕
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