第十一回 詠草 
第十回 西千葉短歌会詠草
世話人＝三浦 佑之 （ＭＩＵＲＡ Ｓｕｋｅｙｕｋｉ）
２００１年１１月１３日、修士論文や卒業論文で忙しい学生が多く、今回は少々
少なめですが、新しい参加者もありました。いつも通り参加者の投票で入選作を
決めましたが、同点が多かったので席次は付けません。
（注）行間の空いていない歌は連作です。
１ 秋風の止みてし後の陽射しにはさくらの頃の香りこそすれ
千里なる庭の園生によこびさし菊のひとかた秋風に揺るる
「草月」の菊のたくみの業を見て庭のいほりに茶を楽しめり
蓮の葉のちよろず枯れし池の面を鳥影一つよぎりけるかも
染めそむる薄もみじ葉の林道いくさ忘れてそぞろ歩めり
２ あべこべに 寒さを運ぶ 灯油売り （入選）
３ 夜目覚める雨しんしんと暖かく死すべき日々にかなしくもなく
４ 天を掃く黄金（きん）の箒も毛羽立ちて ただ力なく聖地眺めん
新しき国はいかにか巨きからむ レンガとしての異教徒の魂
５ 師と友ら語らふ輪から立ち退（そ）きて十八歳に凝固せり我は
６ 割れるような泣顔を見た白昼夢黄色い落葉思い出走る （入選）
７ 嘆く間も惜しみてあくせく生きる我を葉巻くゆらせ男は嗤う
８ 古池の 水面（みなも）に映る 五重塔 覆い尽くすは 紅葉の雨
９ 授業中 窓という名のスクリーン 頬杖のむこうは 流れ、流れ、冬 （入選）
１０ 特効薬乞ふ白鳥は一羽夢に来ぬ夢よりおもたき羽毛こぼして
１１ 夜の奇を恋し僕らは何度でも抜けたと思いし隧道に入る
さあ、早く 早くしないと 夜が座る 天国かそこら 悪くないだろう
ヘェーいっすねぇマジっすかイヤイヤそんなぁ パンッと笑いて妻楊枝を射せ （入選）
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